マイナスかけるマイナスはなぜプラスなのか52009年07月10日 12時20分

前回同様、数学の無矛盾性から考えてみます。

(-3)×0=0という前提から進めます。

0=(+2)+(-2)と変形させ、これを上記に代入します。

(-3)×((+2)+(-2))=0となります。

さらにこれを変形させます。

(-3)×(+2)+(-3)×(-2)=0となります。

これを計算してみるとわかりますが、(-3)×(+2)が(-6)であれば、(-3)×(-2)が(+6)とならなければ、答えが0となりません。マイナスかけるマイナスがプラスとならなければ、矛盾してしまうわけです。

参考
『数の論理』(保江邦夫)
『恥ずかしくて聞けない数学64の疑問』(仲田紀夫)

マイナスかけるマイナスはなぜプラスなのか62009年07月16日 08時59分

 よくありがちな一般的な説明はほとんど取り上げたので、今回は違った角度から。

 以前に誰かに聞いたのだが、「二重否定」のイメージで捉えている人もいるようだ。つまり、マイナスを「否定」を考え、例えば「ないわけがない」(マイナスかけるマイナス)=「ある」(プラス)と理解する。

 一つの理解の仕方として悪くないと思うが、「たす」「ひく」との連関が全くなくなってしまう。つまり「二重否定」の考えでは「マイナスたすマイナス」が全然説明できない。その点では、時間・方向、トランプゲームとは決定的に違う。

 また、コインの表裏のイメージもあるようだ。「裏(マイナス)の裏(マイナス)は表(プラス)」というものらしいが、定義づけを考えると意外と難しい。表の位置をプラス、裏の位置をマイナスと考えて、反対側へ移動することをマイナスをかけることと定義づけると説明はできる。しかし、同様に「たす」「ひく」の説明はできない。

 やはり、正負の数の四則計算(たす・ひく・かける・わる)が統一的・体系的に説明できる方法がより優れているのは言うまでもないが、理解には個人差があるので、上記のような例は一つのイメージ作りとしては悪くないのかもしれない。

 蛇足だが、言語現象として「二重否定」が肯定にならない例も付け加えておく。以下によくまとまっている。
http://beatles-eigo.seesaa.net/article/1576800.html

マイナスかけるマイナスはなぜプラスなのか72009年07月23日 09時54分

今回は「マイナスかけるマイナス」問題の最終回としたい。

多くの人が「マイナスかけるマイナスがプラスであること」に疑問をもつし、私自身もそうであったので、納得のいく説明を求めてきた。また、多くの数学教育者も学習者が納得のいく説明を日々考えているのだと思う。

しかし、「マイナスかけるマイナスはプラスでなくてもいい」という考え方はできないのか。「マイナスかけるマイナスがプラス」になるは、ある体系から考えた単なる決まり事であろう。そのように考えたほうが、その体系では矛盾なく説明できるからだ。そうであれば、別の体系から考えたら、別の決まり事が必要になってくるのではないか。

もしかしたら私が知らないだけで、すでに別の体系が存在しているのかもしれない。

教師にとって学習者に「マイナスかけるマイナスがプラス」であることを上手に説明し納得してもらうことは確かに重要だ。大事な大事な数学教育だ。しかし、それと同時に「これはある体系から考えた単なる決まり事なんだ。他の体系だったら、他の決まり事が必要になるかもしれないんだ。」と伝えることも大事な数学教育ではなかろうか。

数学の本質は、既にある決まり事を理解し覚えることではない。ありとあらゆることを疑い、可能な限りの仮説を立て、自由に考えることである。